閉じていても、狭くても、世界は世界。
小学校卒業を機に、団地の中だけで生きていこうと決めた少年の物語。
団地の外にある中学校に通うよう、教師は説得するけれど、彼は団地の中にあるもので生きていけると取り合わない。
母親は、好きなようにしたら良いと温かく見守る。
友人たちは…それぞれだ。
年月を経るごとに団地内の友人はひとりふたりと減って行く。
いつまでも同じ場所にとどまってはいられないから。
それは、この設定に限った話ではないと思った。
学校を卒業するように。
家を出てひとり立ちするように。
職場を移るように。
いつまでも、同じではいられない。
それはどこの世界でも、同じことだ。
彼には外に出られない理由があったのだけれども…
それが結構ありきたりで、少しガッカリ。
明確な、たったひとつの理由があるより、不明瞭ないくつかの理由があるほうが、私は好みでリアルだと思うから。
例えば恋人と別れるとき、明確な理由をひとつだけ述べろ、と迫られても出来ない。
まぁこの小説はエンターテイメントだから、明確な理由で構わない(し、そうであることが求められると思う)のだけれども。
まぁ、あれだな。
あのバンドのことで、心情を説明出来ないもどかしさを抱えながら読んでいたせいもあるんだがな。きっと。