三浦しをん 著 文芸春秋 2006/3/25 東京都の南西部、神奈川に突きだすような形で存在する、まほろ市。
そのどっちつかずの市内にある、まほろ駅前にある便利屋が、多田便利軒だ。
従業員は多田啓介、ひとり。
しかし年明けすぐの1月3日、バス停のベンチで高校時代の同級生と再会する。
彼の名前は行天春彦、名前も変わっているが素行も変わっている。
何しろ高校時代は一言も話さなかったのだ。教師に指された時でさえ。
そんな彼の声を聞いたのは、ただ一度だけ。裁断機を使用中、クラスメイトの男子がぶつかって、彼が小指を切断したときだけだ。しかも「痛い」とただそれだけ。
そんな彼が、目の前で話している。しかも、べらべたとうるさいほど。
ペースを崩す多田に、彼は言う。
「今晩、事務所に泊めてくれ」
行く当てがないという行天に根負けした多田は、事務所で共に生活をし始める。
従業員と呼ぶにはハンパな立場の行天と、便利稼業に精を出す-。
まほろ駅前多田便利軒 何かのインタビューで『気楽なものを書きたい』というような発言があったような記憶があるこの作品。(いつもながら曖昧な記憶だなぁ)
基本は噛み合わない(ように見える)男二人が事件を解決するっつー王道的エンターテイメント。
そんでもって“再生”の物語なんだよね。
いい年の、子どももいる年の男ふたりのさ。